80sレビュー

2006年6月19日 (月曜日)

Cupid & Psyche '85 / Scritti Politti

Cupidandpsyche85
7年ぶりのアルバムを突然リリースし、何を思ったのかサマソニで来日までしてしまうことになったScritti Polittiが1985年にリリースした2ndアルバム。

このアルバムを一言でいうと、デジタルとアナログの融合で、アルバム全体を通して当時最新鋭のシンセサイザー「シンクラビア」を使った鋭角のエッジのサウンドが満載。16分音符の一つまで操作して作り出したデジタル的な味付けがされている一方で、ボーカルのGreenのヘタウマでアナログ的なボーカルがその嫌味なまでの完璧さを適度に抑制。

メロディーが飛び抜けて良い訳ではありませんが、緻密に計算され尽くされたアレンジ、ミリ秒単位まで考えられたシンセサイザーの音、そして計算間違いで生まれたようなGreenの究極のミスマッチは究極の計算高さか?

しかし、この完成度の高さを目の当たりにすると、近作の精彩のなさはちょっと…

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2006年6月18日 (日曜日)

Cloudcuckooland / The Lightning Seeds

Cloudcuckooland_1ワールドカップが始まり、Embraceのオフィシャルソングと共に"3 Lions"もUKチャートに入っているようなので、リリースは1990年ですが80年代から活躍していたIan Broudieのプロジェクトということで強引に80年代レビュー。

Ian Broudieといえば、80年代初頭にはEcho & The BunnymenThe Pale Fountains、最近ではThe CoralThe Zutonsとリバプール出身バンドのプロデュースを手がける重鎮。このアルバムはそのIan BroudieのソロプロジェクトThe Lightning Seedsの1stアルバムです。

内容はプロデュースを手がけたバンドほどクセはなく、メロディーに重きを置いたポップスですが、ギターとシンセサイザーのブレンド具合が秀でていて、"Pure"のようなキャッチーなメロディをキュートに仕上げたり、"The Price"のようなメランコリックなメロディのメランコリーを深める部分でその威力が爆発。うららかな春の一日のようなカラッとした良質のポップスは梅雨のジメジメ感を吹き飛ばしてくれそうです。

つい最近、7年ぶりの新曲を含むベスト盤がリリースされていますので、入門編としてはこちらもお買い得です。

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2005年7月17日 (日曜日)

The Hurting / Tears For Fears

TheHurtingTears For Fearsがワールドワイドでブレイクしたのは壮大なスケール感を持った"Shout"や明るめのシャッフルリズムの"Everybody Wants to Rule The World"、そしてこれらの曲とその他のヒット曲が多数収録された2ndアルバム"Songs from The Big Chair"でしたが、ここでは敢えて1stの"The Hurting"をセレクト。

僕はシングル"The Way You Are"を聴いた後、このアルバムを聴いたので大きなギャップを感じませんでしたが、2ndを聴いた後にこのアルバムを聴いたら恐らくひっくり返ってしまうような全くベクトルが異なる楽曲のオンパレード。感情を抑制したエレクトロニクス元来の無機的な音と冷静なギターをベースとしたサウンドは、内省的で繊細なメロディを的確に骨付けしていき、2ndとは違った意志の強さを感じさせます。

と言っても、別に難解な内容ではなく、"Mad World"、"Pale Shelter"、"Change"などのスマッシュヒットを記録した楽曲は初めて聴いてもすぐにメロディを覚えられる親しみやすさ。緻密な計算の上でシンセサイザーをツールとして使うという方法論は今でこそ当然ですが、80年代初頭にここまでよく我慢できたなあというのが正直な感想です。

シンセサイザーをサウンドプロファクションのメインに据えたバンドは数多く出ましたが、このアルバムが作り上げた世界に辿り着けたバンドは皆無で、楽曲のレベルの高さだけでなく、その意味でもエレクトロニックポップの傑作の一枚。

その他のレビューはこちら

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2005年7月16日 (土曜日)

Working with Fire And Steel / China Crisis

WorkingWithFireAndSteelいかにも80sインディーズ的なチープさを持った1stアルバム"Difficult Shapes & Passive Rythms, Some People Think It's Fun to Entertain"とSteely DanWalter Beckerを迎えてキッチリ作られた3rdアルバム"Flaunt The Imperfection"の間で発表した2ndアルバム。

低価格のシンセサイザーやシーケンサーの登場でテクノロジーが音楽的表現技術をカバーできるようになった80年代は、テクノロジーがコンテンツである音楽とテクノロジーが表現手段である音楽が分かれましたが、このアルバムは後者。テクノロジーは必須ではなかったけれど使ってみたら案外ハマッたというラッキーパンチ的な印象もありますが、完成度の高いポップスが満載されて聴き応えは充分。

例えば、"Working with Fire And Steel"のイントロでは軽快なデジタルシンセがフィーチャーされていますが、曲そのもののテイストはアナログ的で、デジタルとアナログのバランスを巧く取ったサウンドを作り上げ、トップ10ヒットとなった"Wishful Thinking"でも牧歌的なメロディをアコースティックギターとキーボードが協力しながらサポートして、独特の柔らかさを持った音世界を構築。

忙殺されて過ごす日常の時間とは異なる次元で流れるユックリとした時間。今となっては他に誇れる新しいものは何もありませんが、いつ聴いても心のゴツゴツを埋めてくれる大好きなアルバムです。たまにはこんな音を聴いていつもと違う時間の流れを味わってみるのはどうでしょうか?

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2005年7月10日 (日曜日)

Some Great Reward / Depeche Mode

SomeGreatRewad前作"Construction Time Again"での冷たい音はそれまでに知っていたエレクトロニックポップのピコピコサウンドと比べてショッキングでしたが、このアルバムを特徴付けているデジタルシンセサイザー特有の固く攻撃的なインダストリアルサウンドはさらにその上を行く刺激を持っています。

金属の打撃音をサンプリングした音やリリース部分を短くエディットしたベース音の作り出す尖ったサウンドとキャッチーなメロディの"People Are People"のクールさは今なお色褪せておらず、スピード感溢れるモノクロームのプロモーションビデオも含めて、エレクトロニックポップの一つの完成型。

そんな攻撃性をさらに強めた"Master And Servant"、ピアノをバックにMartine Goreの柔らかなボーカルが重ねられる"Somebody"、美しく儚いメロディが歌詞で描かれる理不尽さを増幅させる"Blasphemous Rumours"など佳作がタップリ収録されています。

この後、彼らは名曲"Shake The Disease"と"It's Called A Heart"の2枚のシングルを挟み、ダークな世界へ足を踏み入れて評価を高めて行きますが、Depeche Modeを「エレクトロニックポップ」のコンテキストで語る場合、このアルバムこそが最重要作品。1984年にこの音が作られ、イギリスのトップ10だけでなく、アメリカのトップ20に入ったという事実には驚かされます。

ちなみに、僕が初めて行ったライブは、彼らがこのアルバムのサポートで行ったツアーでした。ステージにはシンセサイザーが3台並べられたシンプルなもので、大阪厚生年金会館の3階席から見るステージは小さかったけれど、異様に興奮したことを覚えています。

その他の作品のレビューはコチラ

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2005年7月 9日 (土曜日)

Upstairs at Eric's / Yazoo

UpstairsAtErics記念すべき80sレビューの第一回はYazooの1stアルバム"Upstairs at Eric's"を取り上げます。Yazooは、現在も活動しているDepeche ModeのオリジナルメンバーのVince Clarkが女性ボーカリストのAlison Moyetと結成したユニットで、この他に"You And Me Both"というアルバムをリリースしています。

音の方はDepeche Modeの1stや現在のVince ClarkのユニットErasureと同じく、ピコピコしたエレクトロニックポップ。ただ、そこに重ねられるAlison Moyetのボーカルはソウルフルで、無機的なバックトラックと有機的なボーカルの正反対の要素の組み合わせがユニークでした。

中学2年のときに聴いたこのアルバムのリードトラック"Don't Go"の冷めたシンセサイザーのイントロは、当時のDuran DuranCulture Clubなどの甘めの音に慣れていた耳には非常にインパクトが強く、この音を境にして一気にエレクトロポップへの偏愛が始まってしまいました。

さすがに今聴くと音はスカスカで苦笑してしまいますが、非常に美しいメロディとシンセサイザーが絶妙にマッチした"Only You"やキュートな機械音とキャッチーなメロディの"Too Pieces"などを聴くと、当時の想い出がセピアカラーで蘇ってきます。

80sリバイバルの風が吹いている今ならば、この音も受け入れられる…かも。って、やっぱり辛いかな。

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